ON/OFF

真っ暗な部屋に僕は帰り着く。
帰途の道は、いつもと変わらない景色が続いていたはずだった。
おそらく変わったのは、僕の心だ。そのせいか、商店街の道路に敷き詰められたタイルはいやに鮮明な群青色をしていて、それを構成する粒子までが細かくみえたほどだった。
ふと、僕は人生にOFFのボタンがあるなら、押してしまいたいと思う。そして、僕の気が向けば再度電源をONにし、人生を再開させたい。長らく人間をやっていないと、少しは楽しめるような気がするからだ。
けれども、僕は時の流動性の中に放り込まれている人間の一人であって、デジタル化された存在ではない。
刻まれていく時が嫌になる。